車いすを利用する脊髄損傷の立場ですが温泉が好きでときおり日帰り温泉を楽しんでます。
日帰り温泉を利用する場合、ほとんどお嫁さんといっしょに行くので単独で男湯へ突撃します。
なので介助を必要とせず自力対応が可能です。
温泉施設さま側から利用を咎められなければ特に問題なく温泉を楽しんでます。
しかし世の中の普通のひとは障害を持つ人間と接触する機会はなく、浴場に車いすの人間が突撃してくると動揺を隠せない様子も見られます。
(動揺させて本当に申し訳ありません)
今回は日帰り温泉で体験した出来事とエピソードを紹介します。
- 温泉で車いすユーザーに遭遇しても動揺する必要はない!
- 車いすで入浴できる兵庫県但東町の日帰り温泉施設
- 車いすと犬連れで利用できる出石そばのお店
兵庫県但東町のシルク温泉でのできごと
数年前に兵庫県但東町にある日帰り利用できる温泉宿泊施設【シルク温泉やまびこ】に立ち寄ったときの出来事です。
この日に立ち会った日帰り利用の【シルク温泉】は初めての利用では無く幾度か来たことのある温泉でありました。
宿泊可能な施設が【やまびこ】となってます。
車いすでの単独入浴も咎められた経験はありません。
最近、リニューアルされて以前よりもバリアフリーな環境となって車いすでも利用しやすい温泉施設の印象です。
さてそんなシルク温泉の利用で体験したのは車いす利用者であるぼくの浴場突撃によって和やかな温泉ムードが凍り付いてしまいました。
温泉を楽しむ湯船の雰囲気がピーンと張り詰めた
車いすユーザーであるぼくの突撃によって湯船は2度も凍りつきました。
湯船は暖かいので凍りつくワケではありません。
雰囲気がピーンと張りつめました。
- 1度目の凍りつき
まず第一段階の凍りつきは湯に浸かるために車いすを湯船へ近づけたところから始まります。
湯船にはすでに数人のおじさまが入っておられました。
突然車いすに乗る人間が湯船のふちに車いすを横付けして両足が効かない体でごそごそと持参したマットへ移乗を始めます。
湯船に浸かっているおじさまたちの心境を想像すると「身体障害者がひとりでごそごそやってるけど大丈夫か?」とか。
「介助の人間はおらんのか?事故があったらどうすんねん・・・」
そのような心境だったと思われます。
そして身動きのできない身体でゴリゴリと移乗作業を進める身体障害者を直視するのもはばかりみなさん首をうなだれて視線を外すしかありません。
と、いうよりも「大丈夫か?手伝をか?」と声をかけるタイミングを失ってしまったのではないかと想像します。
温泉を楽しみに来たのにモジモジと居心地悪くさせてしまって当事者として申し訳ない気持ちでいっぱいです。
ですがそんな息苦しい時間も長くはありません。
車いすから湯船のふちへ移乗し足を手で移動させて体勢を整えるとかかり湯を済ませて浸かるだけです。
時間にして3分くらいでしょうか。
無事に湯船に浸ると「あー良かったーちゃんと入れたー」という安堵の気持ちが伝わってきます。
しかし次の試練は湯船から出るときでした。
浴場が2度目の凍りつきに襲われた
湯船から上がろうとしたときに一つの問題に気づきました。
シルク温泉は日替わりで男女の浴場が入れ替わるシステムです、当日の男性浴場の湯船が丸い円形の浴場でありました。
四角い湯船なら四隅の角の部分に身体を持って行きます。
角のところで浴槽の縁を背中側にすれば簡単に両腕を広げ身体を引き上げることができます。
しかし丸い湯船はこのようなフォームが取れないので身体を湯船から引き上げようとしても腕にチカラが入らないのです。
そして今回の丸い湯船には手すりがあったのですがあいにく車いすを横づけした位置はステンレスの手すりから離れた位置だったのです。
そのため体を保持することがむづかしく両腕の力で湯船から体を引き上げる動作がやりづらい状況でした。
そんなタイミングで一人の入浴客さまがお手伝いしてくれます。
じつはその入浴客さまは背中に紋様をいれた方でした。
ちょうど紋様が入ったお兄さんが湯船に入ろうとしたタイミングでぼくがもがいていたところでした。
そしてお兄さんの「手伝おうか?」に助けられ肩を借りて湯船から上がることができました。
居心地が悪かったのは周囲の人たちです。
ややこしい特徴の二人でがちゃがちゃやってるワケです。
このときかなり湯船は凍り付いていました。
車いすに座って落ち着き、手伝ってくれたお兄さんにお礼を述べようと湯船の様子が目に入ったとき他のお客さんは固まっていたことに気付きました。
せっかくリラックスするために温泉浴場に来られてるのに居心地悪くさせてしまって本当に申し訳ないです。
ぼくを手伝ってくれたお兄さんにも目立つ存在となってしまい申し訳ない気持ちでもあります。
社会から弾かれた人間の気持ち
失礼にあたるかも知れないですが今回お手伝いして頂いた紋様を入れたお兄さんとぼくに一つの共通点を見出しました。
- 身体的特徴のために温泉入浴をためらう
幸いにも今回利用させてもらったシルク温泉は車いす利用者でも入浴させていただけるありがたい施設です。
けれど露骨に入浴利用を拒否する温泉施設も存在します。
設備と環境の物理的な問題ならそれは仕方のない判断です。
けれど状況の問題ではなく車いすだからという理由で許可しない事業者さんもおられます。
それも結局は仕方のないことです。
われわれは受け止めるしかありません。
紋様を入れた方々も施設の入り口付近にある注意書きの「暴力団や刺青の入った・・・」という文言によってためらいを感じておられるのではないでしょうか。
そんな意味で我々は社会から弾かれた似たような存在なのではと考えてしまいました。
この見解をお読みいただいてご気分を悪くされたなら申し訳ありません。
ただの独り言ですお許しください。
車いすの人間と温泉で遭遇したときの対処法
偶然にも車いすの人間と温泉で遭遇したとき経験がなければ少なからず動揺をさせてしまうでしょう。
- たとえばその時の気持ちと反応
「車いすの人が入ってきたぞ」
「大丈夫かな?一人で湯船に入れるのか?」
「手伝った方が良いかな?」
「手伝って上げたいけど、どうすれば良いのか全くわからん」
「無視無視」
「どうしよう声掛けてあげた方がいいかな」
「いつ声を掛けたら良いだろう?」
このようなお気持ちを抱かせているのではないかと想像します。
そうこうとしている内に介助や手助けを申し出ようと優しい気持ちを持った方は声をかけるタイミングを失い結局行動が出来ないようです。
しかし温泉にある程度入り慣れている当事者としては周りの気持ちの動きを無視するかのようにマイペースで手順を進めていくことが可能です。
なので対処法としては結局は無視で構いません。
もちろん声をかけていただいたら嬉しいです。
けど声をかけようかとモジモジしてもらう必要もないですし居心地悪くなってもらう必要もないです。
なので温泉浴場に車いすの障害者が利用することで他の利用客さんにこのような心理を抱かせてしまうのを懸念し施設側さんは障害者の利用を拒否することは避けていただけたらと思います。
ダイバーシティって言ってるけど実際どうなん?
日帰り温泉を利用していて同じような車椅子の境遇のかたに出会うことはまずありません。
過去1度だけ同じ脊損さんと思われる男性客さんをロビーで見かけました。
ですから施設側さんや利用客さんはほとんどと言って良いほど障害をお持ちの方との接触する機会や免疫などはないのでしょう。
そのような意味ではどのような対応や反応をとって良いのか分からず固まってしまうことも容易に想像がつきます。
致し方ないことであると理解できます。
でもそうなってしまう原因はわれわれ障害者・車いす利用者側にも原因の一端はあるのではと思います。
なぜなら環境がちゃんと整えられたバリアフリー空間にしかでかけないようになっているからです。
実際に出かけたい場所に自分に必要な環境が整っていないことも確かです。
しかしそのような傾向があるからと社会や外の世界に突撃する勇気を無くして快適な場所だけが行動範囲になっていると、社会が障害者に対する接触の機会は一向に増えませんしバリアフリーへの改善が進みません。
社会が障害者を認知する理解度に物申すならパラリンピックに出場する選手ばっかりでもないです。
競技場ばっかりバリアフリーの環境を整えても意味はないのです。
イオンモールばっかり沢山作っても仕方ないと思うのです。
例え温泉浴場一つとってみても脊髄損傷の障害を持つ人間が利用しやすい温泉施設をリサーチするだけでもかなり大変です。
大変という環境をダイバーシティの観点で論じるなら世間様にはもう少し関心を持っていただき意識を広げる必要があるのではと思います。
もちろん障害者側ももっとディープなところに出没すべきです。
もう少し車いすで利用しやすい施設さまが増えることを願ってやみません。
いまはまだヤングでナウい元気なアナタであっても結局は未来の自分のための投資と問題解決となります。
違いますか?
その為にも施設側さんのあからさまな利用拒否がない限り、異端者の侵入で雰囲気をザワつかせて申し訳ありませんが、障害者の存在を知ってもらう為に温泉へ突撃いたします。
どうか障がい者と紋様が入った方への温泉利用のご理解をお願いいたします。
シルク温泉に立ち寄った際の観光スポットとグルメ
▼シルク温泉のテラス兼のきしたでくつろぐお犬さま。
では最後にシルク温泉に立ち寄った際のおすすめ観光スポットとグルメを紹介して締めくくります。
- 出石城と城下町
シルク温泉から国道426号を経由して豊岡市内の方向へ20キロほどに出石城跡と城下町を散策できます。
周辺はお土産屋さんや飲食店も集中しておりゆっくり楽しめます。
- ワンちゃん連れの車いすユーザーにぴったりな出石そば【出石手打皿そば登城】
こちらの出石そば登城さんは車いすユーザーとわんちゃん連れのなかなかレアなケースにも対応する素晴らしいお店です。
テラス席ならわんちゃん連れの場合でも美味しいお蕎麦を食べられます。
しかも車いす用トイレが完備です。
城下町に隣接しているのでおさむらいな気分でお蕎麦を堪能できます。
ぜひシルク温泉やまびこを利用の際は出石城下町を目指して美味しいお蕎麦を堪能してください。
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