実はマツナガ製車椅子は30年の脊損歴で初めての体験です。
マツナガの車いすを選ぶことになった理由は6年前に作ったOX製の車いすが【SX】にガタが目立ち始め色々と問題が発生し業者さんからマツナガの車いすを検討してみればと提案があったからです。
(もちろん業者さんの思惑も別にあったと推測しますが、ここでは妙な勘ぐりは控え素直に喜ぶことにします。)
これまで利用した車いすメーカーはニック(現在はフォースとしてブランド展開。)、オーエックスエンジニアリングなどの車いすに乗ってきました。
中でもOXの車いすは2台のモデルを使ってきました。
初めて選んだオーエックスのMXモデルは平成11年か12年だったのでかれこれ18年間くらいOXを愛用してきたんですね。
親しんできたオーエックスの車いすですが今回マツナガの車いすを試して見たことで印象がガラリと変わってしまいました。
率直な印象としては【とても良い!】です。
座っている時の腰の負担もなく長時間座っていても疲れません。
斜めっている道を車いすで漕いでいる時も腰がしっかりと保持されていてとても安定感が有りすごく楽に車いすを進めることができます。
マツナガに乗り換える前に利用していたオーエックス【SX】は残念ながらこの真逆の印象でした(あくまで個人的な見解です。)。
なぜもっと早くマツナガの車いすを試そうとしなかったんだろうとさえ思いました。
では僕にとってマツナガ製車いす【S-MAX】は具体的にどんなポイントが良いと感じたのかオーエックスの【SX】と比較しながら詳しく解説して見ます。
車いすを選ぶ参考としてお読みいただければと思います。
マツナガ製車椅子S-MAXの印象
マツナガ製作所の車いすを使って見た印象から感じたところをまとめます。
- リーズナブルなのに基本機能をしっかり備えている。
- 折りたたみ式車いすなのにガタつきがない剛性の高い設計。
- 腰に負担がかからない座位が取れる座り心地。
僕が発注した本体車いすは跳ね上げ式アームレストと幅広の前輪キャスタータイヤのオプションを追加しほぼ標準の装備のモデルです。
では詳しく解説します。
- リーズナブルなのに調整機能など基本構造をしっかり備えている。
今回僕が購入したのはマツナガのS-MAXフラットフレームモデルとなります。
価格は標準装備で16万8千円からとなるリーズナブルな車いすです。
以前のオーエックス製SXが標準装備価格が19万4千円だったことを考えるとマツナガ【S-MAX】はコスパに優れていると言えます。
ただしフルアジャスト機能を備えるSXとでは機能性の違いが見えるかと思います。
けれどもOXのフルアジャスト機能がどこまでメリットを産むものなのか約18年間利用してきたユーザーとしては疑問に残る印象です。
さてアジャスト機能としてメインの装備となるのは後輪の車軸調整ではないでしょうか?
もちろんマツナガのS-MAXでもこの調整が可能です。
しかし車軸位置を軸の直径分で前と中心、後ろへと3段階の変更が可能です。
そしてこの構造はホイールベースの長さを調整する機能を果たしているに過ぎません。
もしマツナガS-MAXで座位の高さや背もたれの角度をつけたい場合はシートの張り具合や前輪キャスターの位置調整で対応することが可能になってます。
松永製S-MAXは剛性の高い設計が特長
折りたたみタイプの車いすは2つの大きなフレームから成り立っているので連結するクロス部品などが介在しどうしてもガタつきと【遊び】が発生します。
これまで乗ってきた折りたたみ式の車いすはどれも折り畳んだ状態ではガチャガチャと安定しません。
でもこの現象は今まで車いすなんて「こんなもん」としか思ってなかったのでこの状態が悪いとも受け止めてなかったです。
もちろん17年間親しんだオーエックスの【MX】と【SX】も同じ印象です。
けれど今回体験したマツナガの【S-MAX】ではそのガタつきが存在しません。
もちろん新車での状態なのでガタつきがないのは当然なのかもしれません。
だから長年車いすを利用する立場としてマツナガの畳んだ時のガタつきがないことに「驚き」を感じました。
ペタッと畳んだ時にフレームがグニャグニャとするムダな遊びがなくクロスしている部品が密着しながら車いすをペタッとたたむ感触が得られます。
まだ使い始めて3週間ほどなので今後どう変化していくのかが今後の課題ではあります。
今のところこの感触はとても気に入ってます。
- 跳ね上げ式アームレストの設計構造
今回のS-MAXS-MAXでは跳ね上げタイプのアームレストを選択しました。
このアームレストの設計も非常によくできています。
アームレストを上下に動かした時の操作感はもちろんガタつきなどありません。
軸の支点となる構造はアルミのブロックをガイドにしてガタつきが出ない仕組みにしています。
オーエックスの同じ機能のアームレストでは・・・グニャグニャのガタつきが存在しとても残念な設計です。
オーエックスでは固定式アームレストを選択すれば目立つガタつきは有りません。
S-MAXの乗り心地は?
乗り心地についてはこれまで乗っていたオーエックス【SX】との比較で感じた印象では、マツナガのS-MAXは座っていてかなり腰が楽です。
マツナガのS-MAXは背もたれのフレームの角度がやや起き気味になっていることが僕の座り方に合っていたのでしょう。
脊髄損傷は一般的に腹筋と背筋機能が失われてしまうので損傷部位が首の方へ上がるほど背筋を真っ直ぐにして車いすに座ることが辛くなります。
僕は胸椎損傷の7・8番ですのでむちゃくちゃ座位バランスは悪くはないけれど状態が良い方でも有りません。
背もたれの張り具合を調整できるアジャストベルトで対応していましたがなかなか思うような座位が取れずに腰痛に悩んでました。
実はマツナガの車いすにはそれほど期待はしていなかったのですがメーカーが変わることでこんないにも座位の感覚が違うのかと驚いています。
オーエックス【SX】のデメリット
これまで乗っていたオーエックスの車いす【SX】ではサイドガードはフレーム一体型ではなく布生地による構造でした。
この布生地を採用したサイドガードの構造は色々と問題が有り最終的にプラスチック製のサイドガードに変更しています。
しかし問題は解決できませんでした、
なぜなら布生地のサイドガードもプラスチッック製も横方向へのチカラをしっかりと受け止める構造ではなかったからです。
そのような構造の影響で道路で自走するときにサイドガードがタイヤに擦れて難儀してました。
というのは道路や歩道は必ずしも平坦にはなっていないので車いすで通行する場合は斜めになりながら車輪をこぎ進めることになります。
車体そのものが斜めになっているわけですから腰が重力を受けてズレてしまい布生地やプラスチック製のサイドガードでは外側に膨らんでしまい、その結果サイドガードがタイヤに干渉し擦るデメリットがありました。
過去にスーツガードと呼ばれるサイドガードとアームレストを連結するオプションも試して見ましたが、アームレスト側に巻きつけたスーツガードが緩んでくるので問題は解決しません。
ぼくは柴犬を飼っているので毎日朝夕の二回の散歩に出かけます、つまりハードに車いすを使う環境だったのでソフトなサイドガードの車椅子は利用環境に適してなかったのかもと思います。
- オーエックスの車軸構造
オーエックスでは車輪の軸をオートバイのリヤホイールを固定する部品のような雰囲気を醸しだすアタッチメントを介して車輪軸を固定します。
フレームに仕込んだアタッチメント部品の位置を変更することでほぼ自在に軸位置を変更することが可能です。
しかし自由にアタッチメントが回転する構造なので車軸の位置を決めることが逆に難しくなります。
構造的な特性から軸位置を変更することで座面高さも変わります。
ただしですね、この車軸位置を変更する調整はオーエックスを利用した18年で一度しか経験は有りません。
基本的にあまり動かすことがないパーツですのでいざ軸位置を変更しようとしても部品がフレームと固着していて位置変更はなかなか大変だったことが思い出されます。
無理に【こじったり】するとフレームが破損する恐れも有り注意が必要です。
販売店さまや営業担当者さまに調整していただくことをおすすめします。
S-MAXモデルのメリット!
マツナガのS-MAXに乗り換えたことによって得られたメリットをまとめて見ます。
- サイドガードがフレーム一体式となった構造で快適に自走できる安定感
- 折りたたみ時の幅が285ミリとコンパクトに
- 重量のスペックは10.5キロのスペックなのに軽く感じる印象
- フットレストがバネの仕組みで自動的に跳ね上がる構造
ソフトな材質を採用したサイドガードの構造を持つ車いすからフレームタイプのサイドガードの【S-MAX】に乗り換えたことで快適な車いすでの外出と自走が可能になりました。
両側の固定フレームのサイドガードが腰をしっかりとサポートし斜めっているデコボコ道を自走していても安定感は抜群です。
そして折りたたんだ時の車いすはピタッと固定された状態になりそのサイズは28センチ5ミリというコンパクトな幅に収まります。
一人でクルマへ積み込みする時もフレームがガシャガシャと動かずにピタッと密着しているので積み込み動作もかなり快適になります。
お嫁ちゃんと愛犬の柴犬を最近乗り換えたスズキ【ソリオ】でドライブへお出かけする時も後部座席と運転席とあいだのフットスペースにすっぽり収まるので同乗者が行う車いすの積み込みもスムーズになりました。
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そして意外なところは感じる重量です。
マツナガのS-MAXは以前のOXと比較すると重量が0.7キロほど重くなるスペックなのです持ち上げた時の感覚としてはS-MAXの方が軽いのです。
おそらく車いすをたたんだ時にピタッと密着しその状態で固定され開いたりしないので無駄なチカラを入れなくても安定しているので軽く感じるのかもしれないです。
フットレストもバネが仕込まれていて車いすから自動車の運転席へ乗り移るとフットレストが自動で跳ね上がります。
以前のOXではその都度フットレストを腕で跳ね上げなければ車いすをたたむことができなかったので自動車への積み込みが本当に楽になります。
特に天候の悪い土砂降り雨の日なんかは急いでクルマに乗りたいので助かります。
まとめ!マツナガS-MAXは僕の手足となる相棒
マツナガのS-MAXを購入した体験を元に印象をまとめてきましたがいかがだったでしょうか?
見方によってはオーエックスの車いすと仕上がりを批判する内容だったかもしれません。
しかしこの内容の意図は批判が本意ではなく消費者として正直な印象です。
オーエックスについてブランド誕生のエピソードはもう有名な話で今さらここで詳しく解説する必要はありませんよね?
1986年にヤマハのRZ250Rで峠道を走行中に脊損となった僕としては当時人気だった【イシイのチャンバー】は憧れのパーツです。
同じ脊損となった石井社長が立ち上げたブランドに応援の気持ちはやはり隠せません。
けれど今回初めてマツナガの車いすを利用してみて残念ながらオーエックスの評価は変わってしまいました。
ですがオーエックスに特長やメリットが全くなかったわけでは有りません。
例えばブレーキはタイヤの摩耗に合わせて自由に効き具合を工具不要で調整できる機能はオーエックスならではの特長だと言えるでしょう。
残念ながらマツナガの【S-MAX】では六角レンチで調整することになりブレーキの構造では利便性に劣るかもしれません。
どちらの方式も一長一短あるかと思います。
個人的にはシンプルな構造ながら剛性も高く調整を可能にしているマツナガの設計思想に良い印象を持ちます。
部品点数も少なくする工夫が見えコストダウンを図るアイデアも見られます。
その考えが見られるのはハンドリムの構造です。
ほとんどのセミオーダー車いすではハンドリムの握り幅を希望の寸法で選ぶことが可能になっています。
握り幅というのはタイヤとハンドリムの間隔のことですね。
この握り幅を今回購入したマツナガのS-MAXではハンドリムを車輪に取り付ける構造部分に間隔の異なる寸法で3箇所の穴加工が施されています。
つまりユーザー側でも納車後、自由にハンドリムとタイヤの寸法幅を変更できます。
ハンドリム自体にいくつもの寸法バリエーションを用意すると在庫も管理コストも発生します。
そんなムダが発生する方法は取らずに一つのハンドリムで3パターンの位置変更が可能にする発想に車いすメーカー【マツナガ】のモノづくりへの姿勢と経営努力を感じます。
コストダウンとモノづくりの工夫が見られるマツナガの【S-MAX】との出会いは僕にとって良き経験となりました。
まだマツナガの車いすを使ったことがないよって人にはぜひ試して欲しい車いすブランドです。
もし興味があれば車いすを扱う福祉機器販売店さんに問い合わせてみることをおすすめします。
販売店さんにマツナガとの取引があればデモ車を用意していただけます。
今回まとめてきた情報の通り車いすブランドによって乗り心地と剛性がこれほど変わるのかとびっくりしました。
車いすは障害を持つ人間にとって手足と同じような存在と役割を持ちます。
その役割は靴以上の存在です。
ぜひデザインや見た目だけでなく品質と剛性、設計思想にまで目を向けると色々な違いが見えてくると思います。
マツナガの車椅子は僕にとって欠かせない相棒となり快適な毎日を届けてくれました。
マツナガ製作所のホームページはこちらからどうぞ!