本記事では脊髄損傷者が導尿セルフカテーテルと【コロプラスト社製】スピーディーカテナビの比較で感じたメリットとデメリットについて見解を述べます。
今回のテーマを取り上げる根拠と背景にふれておきます。
- 排尿障害を持つ脊髄損傷者として自己導尿に対応している
- 泌尿器科よりセルフカテからスピーディーカテへの切り替えを促される
- 新型のスピーディーカテに問題を感じた
このような経緯と根拠をもとに【スピーディーカテ】と【セルフカテ】との比較と見解、スピーディーカテを使うことで生活面の影響とメリットなどをまとめます。
スピーディーカテと特徴
【画像はスピーディーカテNavi40】
スピーディーカテは排尿障害を持つ場合に使用する使い捨てタイプの導尿カテーテル。
デンマークに本拠を置き世界40か国以上に拠点を持つ世界的企業のコロプラスト社の製品。
今回このコロプラスト社製スピーディーカテNaviは繰り返し利用が前提のセルフカテからの切り替えで利用することになった。
切り替えのキッカケは定期受診する泌尿器科担当医の方針変更が最大の理由。
スピーディーカテNaviへの方針変更の根拠は尿路感染リスクの軽減となる。
セルフカテとスピーディカテどちらのカテーテルにも使い方に応じてメリットデメリットがあると感じる。
しかし尿路感染リスクを軽減する意味では【スピーディカテ】に優位性を持つ。
なぜならセルフカテではカテーテル収納容器に消毒液を入れ複数回使うことになりやや感染リスクが高いとされる。
しかしスピーディカテでは指で直接カテーテル本体に触れることなく手を洗えない環境でも利用できるので感染リスクを軽減する。
すなわちスピーディカテの特徴は・・・
- 徹底的に尿路感染リスクを軽減した仕様
- 潤滑液が内包されておりアネトカインゼリーなどが不要
- カテーテル表面に触れずにアプローチできるグリップ突き
スピーディカテの仕様はこのような特徴を持ち潤滑ゼリーが不要となり利便性を高め感染リスクに配慮した構造となっている。
スピーディーカテNaviの使用感
今回利用することになったスピーディーカテNaviは40センチタイプの仕様。
セルフカテからスピーディーカテNaviに全面切り替えとなる方針を伝えられたときにサンプルで30センチタイプを試用品として受け取りテストしたが使い勝手が悪かった。
30センチタイプが合わなかった理由はグリップ分の長さが干渉し膀胱までカテーテルが届かないのだ。
こうした結果を担当医伝えたところ40センチ仕様があるとのことで本格的な切り替えになった。
さて実際の使用感としては管自身の感触がとてもツルツルとしていてとても素手では導尿アプローチできない仕様。
つまり指が滑ってカテーテールに力が伝わらないのでグリップありきでの設計構造になっている。
使い勝手としてはややコツが必要な印象で慣れるまでイライラする。
グリップを指で掴むのだがそれでもつかんだ位置によってはツルツルと滑ってしまう。
カテーテル本体の素材感はやや硬くセルフカテのような弾力性は無い。
カテーテルの固さとグリップからどれぐらいの長さで管を掴むかによってカテーテルが押し戻されたりする。
慣れれば問題はないがセルフカテの方がオペレーションはカンタン。
ただスピーディーカテNaviは感染リスク軽減という大義名分を旗印にかかげているところ。
そうした強気の姿勢で攻め込まれているのだが反論したいこともある。
スピーディーカテNaviのデメリット
スピーディーカテを本格的に使いだして判明したデメリットはとにかくゴミが多くかさ張る。
使用後のスピーディーカテを処理する場合はパッケージに設置された粘着面をうまく使うことでゴミをコンパクトにできる。
この粘着部は手指にマヒがある頚損障害を持つ人にも使いやすく考えられた仕様となっていて粘着面で洗面台などに固定し貼りつけることが可能。
この粘着テープをうまく使えば写真のように使用後コンパクトに折りたたむことができる。
けれどトイレは1日一回かぎりではない。
2時間~3時間おきに導尿すれば最低でも5、6回はトイレに行くことになる。
生理現象なので朝や水分を多く摂れば1日10本弱ぐらいのスピーディーカテを消費することになる。
問題はゴミだけではない。
旅行や長期間の遠征に出向く場合にカテーテルだけでもかなりの荷物負担となる。
たとえば1日10本のスピーディーカテを使うと計算する。
世界選手権の日程はだいたい7日前後。
7日間の行程だとして70本分のカテーテルを荷物として用意しなければならない。
ただでさえ遠征時はユニフォームや用具などで荷物が多くなり移動が大変となるところ。
40センチタイプのスピーディーカテは一箱に30本収納される。
70本ならば約3箱分のスピーディーカテが荷物としてかさばることになる。
アジア大会やパラリンピックなら日程は2週間ほどになり、約5箱のスピーディーカテが必要。
もちろん自分はもう競技スポーツは引退した立場なのでこんな心配は無用だが、一番の問題はゴミが気がかり。
なぜならゴミは地球環境にも影響するのでしょべんをする度にゴミを生み出す生活に心が痛む。
もちろんスピーディーカテは燃えるごみとして廃棄できるとコロプラスト社は明言している。
ゴミの処理についてはお住まいの自治体に従ってくださいとのこと。
プラスチック素材のカテーテルを燃やすごみに捨てるものやや抵抗を感じる。
清潔な環境で導尿アプローチするスピーディーカテの思想は理解できるし開発努力は素晴らしいと思うが持続可能(サスティナブル)の観点ではどうなのだろう?
できればただの燃やすごみとして廃棄するのではなく何らかの資源性を持った用途に活用できるなら、なお良いと思う。
(排泄に利用した素材なのでなかなか難しいテーマだと思うが・・・)
セルフカテのメリットとデメリット
▼セルフカテのデメリット
一方のセルフカテでは排尿のアプローチの際、カテーテル本体を指でじかにつまむ動作となる。
あらかじめ手を洗うなどの準備と環境が必要。
しかし車いすで外出すると手洗いできない環境で過ごすことは少なくないので感染リスクとしてはやや高いと言わざるを得ない。
使用後のカテーテルも水道で洗う処置が必要となる。
洗い終わったカテーテルは収納ケースに戻すが数回の使用ごとに消毒液がだんだんと少なくなっていき消毒機能が弱まっていく。
カテーテル本体を収納するケースに少なくとも毎日消毒液を取り換えるメンテが必要となる。
こうしたセルフカテのデメリットと環境を解決したものがコロプラストのスピーディーカテと言える。
ただ実際にセルフカテを使い続けてきた見解としてセルフカテでも問題なく対応できている。
セルフカテを使う環境で尿路感染がゼロではないがスピーディーカテの利用でゼロになるワケでもないと思う。
▼尿路感染となった場合の症状と対応
もし尿路感染となった場合、発熱の症状があり酷いときは40度ぐらいまで体温が上昇する。
だいたいは1日~3日くらいで収まる。
症状が酷いときには抗生物質で対応している。
いままでは尿路感染になったとしても寝てればすぐに治るしこれで良いと考えていた。
状況にもよるがそれほど頻繁に尿路感染を引き起こすワケではないし年に3回もあれば多い方。
けれど2020年1月、パンデミックとなった【コロナウイルス】の影響で状況は変わった。
発熱がタダの発熱で済まされなくなったのだ!
つまりこれまで尿路感染だろうと推測される発熱でも「もしかしてコロナ?!」といちいちビビることになった。
そんな意味ではとことん尿路感染リスクを軽減したスピーディーカテの役割とメリットは素晴らしい。
しかしスピーディ-カテは荷物もかさばりゴミの問題が最大のネック。
そこでセルフカテの活用メリットを考え直してみたい。
セルフカテの活用メリット
素手での導尿アプローチが必須となるセルフカテだが除菌ウェットティッシュなどを用意すれば問題ない。
数回の利用ごとに消毒液が薄まっていく問題はセルフカテを複数持ちすることで対応できる。
たとえば外出する場合は3本のセルフカテを用意し3回の利用ごとにカテーテルを取り換えるなどの方法を検討できる。
実際ここまで神経質にならなくても手洗いしない状態で導尿してもすぐに尿路感染して寝込むことはない。
(あくまで個人の見解)
現実的にこれまでセルフカテの運用で日常生活が成り立ってきたのだからムリにスピーディーカテに切り替えることはないと思う。
要は自己管理の問題。
たとえスピーディーカテを使っていたとしても健康面での自己管理ができていなければ意味はない。
膀胱関連の健康管理にはどくだみ茶をおすすめしたい。
自分はどくだみ茶で泌尿器科のお薬に頼らない生活を心がけ尿路感染を軽減している。
結論!スピーディーカテかセルフカテか?
スピーディーカテとセルフカテどちらも一長一短ありそれぞれの活かし方があると考える。
どちらかの用具を固定的に使うのではなく環境や場面に応じて使い分けができるのがユーザーとして嬉しい。
たとえばゴミを出さないセルフカテをメインとして使いながら補助的にスピーディーカテを利用するなど。
使い終わったあとのセルフカテを洗えない環境ならスピーディーカテは役立つ。
たとえば多目的トイレの存在を期待できないゴリゴリのキャンプ場などはスピーディーカテの能力を発揮できると思う。
医療の現場ではどのような忖度がありスピーディーカテへの全面切り替えの判断がなされたのかユーザー側として知る由もないし穿った見方もできなくないがここでは控えておく。
ただ当事者として意見を述べさせて頂くならスピーディーカテの全面利用はありがた迷惑。
アナログレコードで楽しくやっていたのに強制的にCDへ切替られた80年台終盤を思い出す。
排尿障害を持つ立場では両方のツールを活用し使い分けできた方が生活面は便利になる。
今回は以上です。
コメントを残す