オートバイレースを描いた映画【汚れた英雄】。
振り返ってみるとこの映画に出会ったのは中学3年生ごろ。
時代は1982年でした。
さてこの映画に登場するレーシングマシンは2022年現在ではもう見ることができない2ストロークマシン全盛の時代でした。
今回はそんな2stマシンの市販車ヤマハ「RZ250R」に乗り、単独事故により脊損さんになってしまった2stユーザーの体験をもとに魅力を語ってみます。
汚れた英雄に登場するレーシングマシン
汚れた英雄で主人公の【北野晶夫】を演じているのはNHK大河ドラマ【真田丸】で真田正幸を飄々とした演技で表現した俳優【草刈正雄】さん。
映画の中でレースシーンを担当したのは当時ヤマハのスター選手平忠彦さんがスタントとして登場。
そして映画のレースシーンに使用されたマシンがヤマハのファクトリーレーサー「YZR」などの2ストローク車となります。
昭和の時代に撮影された古い映画ですがアマゾンプライムのプラットフォームからレンタルで観ることができます。
- 【汚れた英雄】で走るレーサーの車種とメーカー
作品に登場するマシンはほとんどがヤマハのレーシングマシンとなってます。
この理由は映画撮影を全面的に協力したヤマハとの関係性によるものと判断されます。
ヤマハが協力したことでヤマハ発動機が所有する国際レーシングコース「菅生サーキット(スポーツランドSUGO)」においてレースシーンを撮影。
映画に参加した現役レーシングライダーもヤマハ系のチームに所属する人選となりヤマハ製レーサーの登場が多くなっていると思われます。
- 北野晶夫がライディングのヤマハ市販レーサー「TZ500」
ストーリーの設定では北野晶夫はヤマハ系のプライベートチームオーナー兼ライダーというポジション。
こうした背景からヤマハが扱う市販レーシングマシンのTZ500に乗っています(リサーチの結果おそらく81年型)。
(さらにストーリー終盤の最終戦は82年型を使用との情報)
市販のレーシングマシンをコンペティションモデルと呼び、プライベートチームに所属するライダーは市販レーサーでレース活動を行います。
2st車両全盛期にロードレースを行う時代ではヤマハだけでなくスズキやホンダもコンペティションモデルを扱っていました。
一方カワサキでは1983年以降世界選手権ロードレースから撤退しており、おそらくロードレース車両での市販車レーシングマシンは存在しなかったと思われます。
(モトクロス車でのコンペティションモデルは存在)
さてレースシーンに映るマシンはヤマハ製のほか、カワサキのワークスマシン「KR500」やスズキのRGBなどの2stマシンを見ることができます。
汚れた英雄にHONDAのレーシングマシンは登場しない
ホンダの2stロードレーサーと言えばアメリカ人ライダーのフレディースペンサーが世界チャンピオンを獲得したワークスマシン「NS500」。
しかし1981年にやっとNS500の開発が始まったばかりであった。
市販車レーサーであるRS500の販売は1983年からのリリースのため映画「汚れた英雄」が撮影された1981年の時点では存在しない。
このため劇中にホンダの2ストマシンが登場することはなかったと推測できます。
1980年当時のホンダのレーシングマシンについて
じつはこの当時HONDAには【NR500】という楕円ピストンが特徴の4ストロークレーサーが存在し世界選手権レースに参加しています。
しかしながらレースで結果を残すことができず1982年に実戦開発は終了し新開発のNS500へシフトしていきます。
そんなNR500の開発努力が実を結ぶのは5年後の1987年のこと。
ル・マン24時間耐久ロードレース出場を目指してプロジェクトは進められたオーバルピストンエンジンはNR750として1984年より開発が進められます。
24時間耐久レースでは残念ながらエンジントラブルにより途中リタイヤの結果ですがオーストラリアのスワンシリーズレースに出場し優勝の結果を残しています。
さらにおよそ20年後のMotoGP元年となる2002年。
4ストロークV型エンジンの開発とノウハウは【RC211V】へ受け継がれ当時HONDAに所属したバレンティーノロッシ選手によりデビューイヤーで優勝をもたらしています。
NR500のV型エンジンは市販車のVFシリーズやオーバルピストンを市販化した【NR】へ活かされています。
ライバル役大木圭史はワークスマシン「YZR500」に乗る
市販レーシングマシンのTZ500に対してワークスライダーが乗るマシン「YZR500」の存在があります。
映画では北野晶夫のライバルである大木圭史が乗るマシンがそのYZR500となります。
YZRはアメリカ人の世界選手権チャンピオンライダー「キングケニー」ことケニーロバーツ選手により1979年から3年間シリーズタイトルを獲得。
ケニーロバーツ選手が乗るYZRに黄色と黒のラインでカラーリングされた別名「ストロボカラー」あるいはインターカラーや「チェーンブロックカラー」と呼ばれるカラーリングはアメリカでのモーターサイクル事業を推進していくための戦略的な意味合いで採用されていると知ります。
見事にヤマハはケニーロバーツの貢献によりアメリカでの知名度を広めることに成功したとされています。
汚れた英雄では大木圭史のレースシーンを演じているのが当時ヤマハの契約ライダーであった木下恵二選手。
木下選手はフレディースペンサーが参戦した1983年開催の日本GPにてアグレッシブな走行でスペンサーを追従し残念ながら1分50秒を経過したタイミングで転倒リタイヤ。
ガッツある走りでスペンサーを追っかけた木下選手の映像をYouTubeで観ることができます。
2022年現在の市販レーサーの状況
さて時代が進んだ2022年現在の市販レーサーの存在はいかがでしょう?
リサーチしてみたところHONDAのレース部門【HRC】では市販レーサーを扱うと情報があります。
>>MotoGP新型プロトタイプマシン「RCV1000R」を発表
しかし市販とはいうものの一般的な販売ではなく資金力を持つ組織だったレーシングチームへの供給と想像できます。
価格はマシン2台とスペアエンジン2基を含めた1億3000万円という情報です。
億を超える金額にぶっ飛びますが金額もパッケージ内容も個人では対応できないスペックです。
レース車両ではありませんが個人で買うならほぼレーシングマシンの【RC213V-S】となるでしょう。
MotoGPのMoto3やMoto2のクラスではオートバイメーカ供給のワンメイクレースが展開されており市販化されています。
>>Moto3向け市販レーシングマシンHRC【NSF250R】
2ストロークレーシングマシンとMotoGP
冒頭から触れている現在のオートバイレース最高峰クラス「モトGP」では4ストロークエンジンと新しく導入された電動モーターバイクの「moto-e」となってます。
MotoGP以前は世界選手権ロードレースと呼び2ストマシン全盛期。
モトgp元年から2002年シーズン途中までは4ストマシンと2ストロークマシンの混走であったが翌年の2003年には完全に2ストマシンは姿を消してしまうことになります。
1980年代のバイクブーム絶頂期を過ごした僕としてはオートバイ世界GPと言えば2スト。
バイクレースの魅力と言えば2ストロークマシンから聴こえる甲高く唸るようなエキゾーストノート(排気音)とチャンバー(排気マフラー)から排出される白煙。
ひと括りに2ストと言えどもバイクメーカーとレーサーによってそれぞれ排気音がまるで違うのも魅力でした(もちろん4ストだってそうだが)。
ひとつの時代を築いた2ストロークマシンであったが環境問題などの理由でマーケットから完全に締め出され販売開発は終了となりとても残念。
2022年現在で2ストマシンを楽しむ方法
レースの場面でも新車でもふれることの出来ない2ストロークエンジンのオートバイ。
こんな厳しい環境のなか2stオートバイを楽しめる方法を考えてみます。
- 手軽な映画作品で楽しむ
今回の記事でテーマにしている映画「汚れた英雄」は2ストマシンがガンガン走っている映像が楽しめる貴重な作品です。
他には80年代にHONDAのワークスライダーとして活躍された【片山敬済】さんが主演のドキュメンタリー映画「蘇るヒーロー」はかなりおすすめです。
じつはこの映画は当時15歳で劇場でリアルタイムに鑑賞したバイブルとなる作品です。
蘇るヒーローと同時上映だったスズキのレーシングライダー【バリーシーン】さん主演の「ザ・ライダー」も2ストロークレーシングマシンを堪能できる作品です。
ただストーリーはクソです。
けれど本物のレースシーンが劇中で使用されておりかなり楽しめます。
もちろん今回フォーカスした汚れた英雄もおすすめしたいロードレース映画です。
- 中古車市場で往年の2ストローク車を探す
街中をクルマで移動中にごくたまに2スト車を見かけることがあります。
ヤマハのRZとホンダのNSは頻繁ではないですが見かけることは多いです。
でも全く見かけないのはカワサキのKR250とスズキのRG250γ。
かなりレアなオートバイではMVX250というめちゃくちゃ白煙を噴くバイクを見かけます。
なのでRZやNSなら中古車で探せるのではと思います。
しかし古い車両なので状態とメンテが心配です。
ある程度は修理を自分で対応していく根性がなければ挑戦は断念した方が無難かと思います。
ぼくがいまだ現在も所有する87年式カワサキエリミネーター250も相当に古いバイクとなってあちこち故障が目立ってきました。
自分で対応できる範囲ですがキャブをバラして洗浄などやってます。
がんばれるところまで維持してやっていきたいと考えてます。
けれどそんな古いオートバイにはメンテのデメリットだけではないです。
最新のオートバイにはない魅力があるのも事実です。
残念ながら2022年現在では新車購入のオートバイは4スト車一択の環境です。
(海外メーカーのKTMやハスクバーナなどの2スト輸入車にチャレンジする方法もある)
2スト車の爆発的なパワーを知らない若い人たちに80年代のしかも2ストエンジンを搭載したオートバイで体験してみて欲しいと思います。
コメントを残す