じつは右股関節を5年ほど前に骨折しています。
股関節を骨折した経緯と原因は車いすで歩道を走行中に歩道上のつなぎ目の段差に車いすのキャスターと呼ばれる前輪が引っかかり転倒してしまったからです。
そこそこのスピードで車いすをこいで走らせていたので、キャスターが段差に引っかかった衝撃で車椅子は前のめりになりながら横倒しになり、自分は車いすから投げ出される格好で吹っ飛び右側の腰から道路に落下しました。
今回はこの出来事で分かった急なアクシデントへの対策と身体の反応を解説したいと思います。
脊損が股関節を骨折した場合の身体の反応は?
歩道のつなぎ目の段差に前輪キャスターが引っかかり転倒した僕は幸いにも偶然通り掛かった自転車に乗るお兄さんが手助けしてくれたおかげでスムーズに車椅子に乗ることができて無事に家に帰りました。
普通なら股関節とは言え、大腿骨の付け根を骨折しているので何らかの痛みはあるはずです。
でも僕は完全下半身麻痺のセキソーンなので不幸か幸いか痛みを感じません。
(背骨の7番と8番を圧迫骨折している僕は完全麻痺の脊髄損傷者です。)
自宅に帰ってお尻に傷が出来ていないか心配だったので直ぐにベッドにあがり下半身を確認しました。
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幸いどこにも傷や出血はなく青あざもできてなかったので安心しました。
その後痛みはなく、ふつーに泡が美味しい飲み物をグラスに注ぎプハーっとしていました。
この時点で何ら異常を感じていません。
しかし翌日、ベッドで着替えをしていると、いつもは感じることの無い、お腹あたりにイヤ~な汗と筋肉の引きつりを横腹に感じます!
おかしい変だ!異常だと感じました。
とっさに昨日の転倒での影響があったとわかりました。
僕はすぐに病院を受診する気持ちを固め近隣の木津川病院の整形外科に駆け込みました。
診察で医師に転倒の経緯を説明しレントゲンを撮ってみると・・・
そうです、骨折と聞いたとたんに気持ちが悪くなり貧血を起こしてしまいました。
当然骨折したのだから手術するだろうと思っていると手術できませんとの医師からのご説明。
それはなんでか?
- 脊髄損傷の患者は麻痺のため筋肉の緊張がない
- 筋肉の緊張がないことで人工股関節は脱臼しやすくなる
- 筋肉の緊張のない患者に人工股関節を手術し脱臼すると肉を突き破る恐れがある
そして手術しなくても大丈夫な理由は?
- 麻痺があるので痛みを感じない
- 歩くことができないので人工股関節を入れる意味がない
まあこのような理由で折れたままの股関節で過ごしています。
しかしいくら脊損で感覚が麻痺していて痛みを感じないといってもさすがに骨が折れたままは気持ちのいいものではなく、時折股関節の奥のほうにいやあな鈍く重い痛みを感じます。
激痛ではないですが、腰右側を下に横向きで体制をとるときは折れた骨の部分が骨盤にあたりゴリゴリとした音が響くのがなんとも気色悪いです。
だいぶんこの状態の身体にも慣れましたが、この事故でひとつの教訓を得ました。
それは車いすの身体になって数十年がすぎ歩くことがなくなり、骨が弱くなってきているのです。従って車椅子の身体になって補そう具を装着して平行棒などで立位を取ることを時折していれば骨の劣化をある程度は防げたのではないかと思ったのです。
もしこの文章をお読みの方で脊損になったばかりの方がいらっしゃったら立位訓練をご検討ください。
ぼくにとっては教訓というより後悔でした。
車椅子外出中のアクシデント対応
歩道の段差とつなぎ目は車椅子ユーザーにとって厄介な問題です。
段差でつまずいて転んだとは言えそもそも僕がシャカリキに車椅子を漕いでいたのが原因です。
けれどふつーに歩道を車椅子でおじいちゃんおばあちゃんが手押しぐるまで歩くスピードでもやっぱりつまずいて段差あるんかい!と怒鳴りたくなる時が多いです。
ですから車いすは段差が何よりも注意が必要です。
けれども実問題そんなに下ばっかり見て車椅子を漕いでいれないので注意していても段差につまずいて転んでしまう場合があるでしょう。
道路や歩道は硬いアスファルトでできていますのでセキソーンにとっては褥瘡が心配です。
車いすから落っこちて体勢を立て直し車いすに移乗するまでにはお尻のしたを硬い地面から保護してあげる必要があります。
そんなアクシデントに対応するための対応策として普段から車いすのロホクッションの下にもう1枚クッションを敷いておくと対応できます。
クッションは分厚いものだと問題があるので1センチほどのウレタン素材でできているマットを使います。
このマットがあれば突然の転倒やアクシデントにお尻を褥瘡から守ることができます。
ウレタン素材でできているので車いすのサイズに合わせてカットしロホクッションの下にひいておきます。
助けてくれた見ず知らずの人の優しさ
今回のアクシデントで偶然通りかかった自転車の人に車いすを身体の近くまで寄せてきてもらって車いすに乗りあがることが出来ました。
助けてもらった方にお礼を申しあげて自宅に帰ることができました。
この場を借りて御礼を申し上げます、ありがとうございました。
ちなみに見ず知らずの方に助けていただくのは今回が最初ではありません。
このセキソーン人生30年の中で数えきれないほどの優しさに触れてきました。
脊損になってもしかしたら一番よかったことは人様の優しさに触れられることかもしれません。
しかし一方では、連日のようにテレビで不幸な出来事が伝えられています。
でも負の部分ばかりをフォーカスし過ぎな気がします。
報道するべきこととそうでないことはもっと区別しても良いのではないでしょうか?
それができなければ悪いニュースと同じボリュームで優しいホッコリするニュースを届けるなどバランスを取るよう義務づけするとかできないもんですかね?
まとめ
いかがでしょうか?
股関節を骨折しても痛みを感じないセキソーンの体の特徴がお分かりいただけたと思います。
脊髄損傷として人生が始まったばかりという初々しい方にとっては脅すような内容になったかもしれません。
でも日本の道路は車いすで外出しやすいように考えられてはいません。
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都心部などはバリアフリーの考えが取り入れられた街づくりがされていますが、田舎や地方に行けば全く進んでいない所の方が多いです。
東京パラリンピックを控えて整備が進んでいるとは思いますが、残念ながら改善が行き届くのは大都会の一部だけというのが現状ではないでしょうか。
道路と歩道の段差は車いすを使う下肢障害者だけの問題ではありません。
つまりベビーカーやお年寄り、視覚障害をもつ方など、今健常者のあなたであっても出産や育児、老いという過程で障害に直面することになります。
どうか脊損のおっさんが一人でワーワーゆうとんなとお考えなさらず、世の中みんなの問題としてバリアフリーをお考えいただく機会になればと思います。
なお念の為に申しておきますが、一口に脊損と言っても症状と機能障害には個人差があるのが脊損の難しいところです。
つまり今回の記事で紹介した僕の痛みのケースはあくまで僕の場合はという前提でご理解ください。
最後までお付き合いありがとうございます。